つまようじからサラブレッドまで

パワフル関西 2004.11

パワフル関西 2004.11-2

…つまようじとサラブレッドは、デザインの名著レイモンド・ローウェイの「口紅から機関車まで」をもじったものです。レイモンド・ローウェイは、小さな口紅から機関車まで幅広いデザインをした苦労話をこの書に記しています。私もつまようじのデザインに接する機会が上述のようにあったわけですが、実はサラブレッドをつくるデザイン活動も行なっております。

私事で恐縮ですが、幼年の頃が馬が大好きでした。下町の町工場で育ったこともあり、荷馬車が石炭やコークスをよく運んできました。近くには馬車屋(今の運送会社)や蹄鉄屋(今の自動車修理工場)等があり、馬と生活は密接なものでした。父が騎兵隊員で、自宅に軍馬の写真や乗馬具等があり、自然と馬に強い関心を持ち始め、子供の時から馬を描くことを得意としていました。それが講じて、絵の学校に進み、今日に至っております。

私の会社のマークは「馬」です。馬とデザインは一見関係がないようですが、実は大変関係深いのです。馬とデザインの関わりが強いのは、ヨーロッパの有名ブランドを見ればわかります。馬をブランドにしている企業にフェラーリ、エルメス、ロンシャン、ポロ等ありますが、これらの老舗ブランドは、かつては馬車屋であり、鞍(くら)や鐙(あぶみ)屋であり、駅馬車厩舎であったりするわけです。トヨタ自動車の本社がある鞍ヶ池にも彫刻家、流さんの鞍の形をした石のオブジェが鎮座しており、トヨタ自動車が馬のような乗り心地の良い車づくりを念じたシンボルと聞いております。
ミラノにある博物館で、たしか「ダビンチ科学博物館」だったと思いますが、馬を軍事や使役に使い、富国強兵、産業革命による国造りとして「馬力」を原点とする鉄道、自動車、飛行機、船舶、産業機関の発達をジャンル別に展示してあります。これらの工業製品展示物に、いかに馬やデザインが関与してきたか極めて興味深いものがあります。

より、「馬とデザイン」の関わりを検証すべく会社とは別事業として昭和45年、北海道長万部にサラブレッドの生産牧場を開設、平成元年、同じく日高、静内地区に新設の牧場を開設し、サラブレッドのプロダクトデザインを開始いたしました。
サラブレッドは人が計画的、意図的に改良した「生きた芸術品」と言われ、付加価値の高い商品でもあります。この馬作りにデザインセンスをそのように転用していくのかが暗中模索の連続でした。現在まで300頭近いサラブレッドプロダクトを行って来ました。馬は生き物、日々、刻々と変化します。少しの手抜きも許されない生産、育成プログラムをデザインするとき、工業製品開発やブランドづくりに通じる厳しさと喜びを感じ取ることができます。
馬は無口ですが、強い馬をつくるためにはひとつの表情や行動変化をも見逃すことがあってはならないのと同様に、商品やブランディングもそれと同じ表情や行動を持つものです。…

「パワフル関西 2004年11月号 <特集:デザインが関西をパワーアップさせる>」(財)経済産業調査会発行 より一部抜粋

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